議会改革白書
議会改革白書2012年版 議会改革、次のステップへ
編著 廣瀬克哉・自治体議会改革フォーラム
生活社 2012年7月28日発行 本体3,500円 A4判 248ページ

なにが変わった?議会基本条例「未制定議会」と「制定済み議会」の比較分



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はじめに
 主に国政に起因する政治不信が深まっている。民主党の分裂など政党政治の枠組にとっては相当なインパクトをもつ政治変動が起こっているにもかかわらず、しらけきった世論の反応と、どの政治勢力に対しても期待感が盛り上がることのない状況が展開されている。毎週、首相官邸や国会が多数の人びとによって取り囲まれているにも関わらず、高揚感も先鋭な危機感もさほど広がることはなく、人びとの現状に対する不満や、事態を変えていこうとするエネルギーは、少なくとも既存の政治というチャンネルには向かわないという事態が続いている。

 震災からの復興、今後のエネルギー政策、外交や通商政策など、国政に期待できないから、身近な自治体レベルから世の中を変えていこうということだけでは済まない、大きな課題も明確になっている。とはいえ、政治というものへの最低限の信頼感を再構築していくための手がかりは、どうも国政には見いだしがたいという雰囲気が充満している。自治体の内発的な改革としての議会改革は、いまそのような状況の下で、しかし着実に静かに展開されているといえるだろう。この延長上に、政治に対する期待や希望が生まれてくることにつながるのかどうかはまだわからない。だが、地味で小さなものかも知れないが、改革の成果がここには着実に重ねられつつある。そんな実績こそがいま求められている。

 今年の議会改革白書も、全国からのさまざまな改革事例の報告と、地方自治法などの制度改革についての論評、そして議会改革をめぐるさまざまな資料とその分析によって構成した。

 報告の冒頭は、東日本大震災と福島第一原発事故の被災地の議会からお願いした。発災直後の初動においてその存在意義があらためて問われた議会だが、その後の被災地の議会のさまざまな取り組みには、あらためて注目しておくべきことが多い。自治体として未曾有の事態に直面しながら、試行錯誤を重ねながらの1年余りについて、福島、宮城、岩手の3県から、それぞれ違った状況と役割の市議会、県議会から報告を寄せていただいた。被災地以外から被災地に対して議会ができることという観点での検討も必要だろう。また、この震災をきっかけとして論じられるようになった事前防災という観点からは、被災地以外の議会にとっても当事者としての役割が問われる課題がすでに少なくないはずである。

 議会改革の展開という点では、議会という機関がどのように成果を挙げようとしているかについての事例報告と、市民から議会の改革を促していくための取り組みについて取りあげた。また、機関としての議会の取り組みの基本というべき議会報告会については、実践例が広がっているものの、参加人数が少ない、議会の報告内容が行政と変わらず議会から聞く必然性を感じないとの批判を受けるなどの悩みをかかえている議会が少なくない。その中で、さまざまな工夫も各地で展開されつつあり、そのいくつかについて報告を収録した。このような経験を広く共有し、普及しつつある議会報告会が、義務付けられているからやむなく行う活動や、議会の自己満足としての活動に陥ることなく、市民にとって議会との重要なチャンネルの一つとして活かされていくような展開を期待したい。

 議会による評価活動の展開と、議会事務局による議会活動のサポートについての報告がそれに続いている。いずれも議会改革の次のステップにとって欠かすことのできない取組みである。

 制度改革については、2011年の地方自治法改正による市町村基本構想の策定義務づけの削除や、地域主権改革による条例による上書き、自治体運営への住民参加の改革などを取りあげ、また、現在国会上程中の地方自治法改正案で法律の中に取り入れられようとしている通年議会の制度について検討を加えている。

 自治体議会運営実態調査は、2012年で6回目の実施となった。例年通りの分析を行っていることに加えて、議会基本条例の制定議会とその他の議会との取組状況の違い(議会基本条例の効果の確認)も行っている。さらに、2007年調査からの変化についても検討した。議会改革の進展によって大きく変わった点が何であり、あまり変化が見られないのが何か。それを通して読み取れることをあらためて考えていく必要があろう。

 議会基本条例については、2011年の制定数は97本となり過去最高となっている。昨年版に続いて特に特徴的で注目に値する条例に絞っての掲載とした。反問権を積極的に位置づける条項、住民投票条項、市民が議員として活動する環境を整える条項など、これまでにない要素を盛り込んだ条例も登場しており、それらについては掲載すべき条例として収録している。資料としてご活用いただければ幸いである。

2012年7月 編者を代表して 廣瀬克哉

目 次
第1章 成果志向の改革実践とアプローチ  
巻頭提起 議会改革の成果を念頭におくべき時期が来た
  自治体議会改革フォーラム呼びかけ人代表 廣瀬 克哉
テーマ1 震災復興と議会 
複合大災害の中で市議会が果たした役割
  平田 武 南相馬市議会 議長
住民と向き合い震災復興をめざす
  千葉 徳次 陸前高田市議会 事務局長
被災市町の声を国、知事につなぐ
  宮城県議会事務局
コラム:震災復興における自治体議会の役割
  饗庭 伸 首都大学東京准教授
テーマ2 「チーム議会」で議決責任を果たす 
委員会活動を議会活性化の基軸に
  天神林 美彦 登別市議会 議会運営委員会委員長
市民の意見を反映させるしくみをつくる
  瀧澤 逸男 上越市議会議長
自治基本条例の検証から継続的議会改革へ
  長野県飯田市議会
講演録:超党派議員で統一マニフェストを策定
  白川 秀嗣 越谷市議会議員
コラム:奈良市における「議会改革市民会議」の取り組み
  北井 弘 政策研究ネットワーク「なら・未来」副代表幹事
テーマ3 進化する議会報告会 
地域の課題をテーマに議会懇談会を実施
  白内 恵美子 柴田町議会副議長
定数と報酬に市民理解を!
  小野 宗司 佐伯市議会議長
議会報告会と議会改革の取り組みについて
 藤原 政文 雲南市議会議長
 周藤 強 雲南市議会運営委員会委員長
 福島 光浩 議会改革プロジェクトチーム座長
講演録:議長選の敗北を逆手に
 目黒 章三郎 会津若松市議会議長
コラム:宝塚市議会の議会報告会を傍聴して
 ザ・ギャラリー北摂連絡会+ みらいネット        
テーマ4 拡がる議会の政策評価 
計画・評価と議会
 菅原 敏夫  地方自治総合研究所研究員
特別委員会で「事業仕分け」を実施
 内田 勝廣 常陸大宮市議会 行財政改革推進特別委員会委員
決算特別委員会での事業評価
 館 正義 藤枝市議会 議会活性化特別委員会委員長
傍聴者も参加できる行政評価を実施
 高柳 俊哉 さいたま市議会議員 決算・行政評価特別委員会前委員長
コラム:長岡京市における「市政まるごとしわけ隊!」の取り組み
 林 定信 「市政まるごとしわけ隊!」代表      
テーマ5 変革期を迎えた議会事務局 
我、市民との架け橋たらん
 吉村 慎一 議会事務局研究会会員/福岡市職員
実務のプロ集団が議会を変える
 香川 純一 議会事務局実務研究会 事務局長
コラム:「チーム議会事務局」で条例制定をサポート
 古川 博三 山陽小野田市議会事務局長
講演録:議会議員の能力開発――「質問力」をつける研修
 土山 希美枝 龍谷大学政策学部准教授   
第2章 第2章 議会制度の転換点─ 2011年の論点をめぐって  
総合計画と向き合う 
総合計画の再評価と議会の役割─地方自治法改正を受けて
  神原 勝 北海学園大学法学部教授
地域主権改革と議会 
自治体と議会は地域主権改革にどう対応すべきか
住民と議会 
住民の政治参画機会の拡充と民主主義の原点
  片山 善博 慶應義塾大学法学部教授
通年議会の導入 
通年議会への期待と課題
  駒林 良則 立命館大学法学部教授
第3章 全国自治体議会運営実態調査 結果報告2012  
全国自治体議会の運営に関する実態調査2012 調査結果概要
全国自治体議会の運営に関する実態調査2012 集計表
全国自治体議会の運営に関する実態調査2012 回答自治体一覧表
コラム:議会改革は進展しているのか?―2007調査と2011調査の比較分析から
 長野 基 市民と議員の条例づくり交流会議運営委員         
資料編 議会基本条例の傾向と分析・条文集  
条文分析:2011年制定の議会基本条例に見る議会改革の動向
議会基本条例条文比較分析一覧表(2011年制定)別表
コラム:議会基本条例が議会活動に与えたインパクト―制定・未制定議会の分析から
 長野 基 市民と議員の条例づくり交流会議運営委員
議会基本条例条文集