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■ 緊急座談会:佐藤竺さん×大森彌さん(進行:廣瀬克哉)

自治体議会改革フォーラムでは、今年1月末より全国の1890自治体議会すべてに郵送アンケート調査を行い、1468議会から回答を得ました。その最終結果取りまとめを前に、急遽、座談会を開催し、議会改革のけん引役を努めてこられた大森彌(都道府県議会制度研究会座長)さんと佐藤竺(第2次地方(町村)議会活性化研究会委員長)さんに、お話を伺いました。

■増えてきた一問一答方式の採用

【廣瀬】 今回の「変えなきゃ!議会」キャンペーンでは、「自由な討議のできる議会」「市民が参加できる議会」「透明性のある議会」という共通改革目標を掲げていますが、今日は調査結果を踏まえて、先生方からコメントをいただきたいと思います。
  まずは、議会における討議の現状を尋ねた項目について、どうご覧になりましたか。

【佐藤】 議会でほとんど討議がなされていないというのは、非常に奇異に感じています。
 事前通告については、町村議会活性化研究会でも一貫してやめるべきだと言い続けてきたのですが、この調査を見る限り、まだ徹底されてはいないようですね。ただし、相対的に見て町村議会のほうが、一般質問と本会議における質疑制限は少ないようです。岩手県の沢内村(現・西和賀町)がしていたように、回数に制限を設けず、意味の無い質問が繰り返される場合は議長判断でやめさせるなど、弾力的運用を行うべきではないでしょうか。
 一問一答方式は、町村議会ではほぼ半数が実施と回答していますが、以前に比べて増えてきたような気がしますね。


佐藤竺さん(第2次地方(町村)議会活性化研究会委員長)

■「自由討議」という概念の衝撃

【廣瀬】 首長提出議案をめぐって議員同士が「自由な討議」を行っているかどうかを尋ねた設問に関しては、議会事務局から「設問の意味が分からない」との問い合わせを数多く受けました。

【大森】 議会運営に対する固定観念に衝撃を与える意味でも、アンケートで「自由討議」について尋ねたのは非常に良かったと思います。
 ほとんどの議案が首長から提出されているという現実が、今回の回答すべてに大きく関係しているのではないでしょうか。議員の発言は、もっぱら首長に対する質問に終始し、しかも議案関連資料が事前に出され、一定の調査期間が与えられているにも関わらず、議員は「知らないことを聞いてもいい場」だと勘違いしている。質問を練り上げて臨む議員は少ない。これでは議会が「討議の広場」になるはずはありません。
 しかし、議会も本来の議会たり得ていないことに気付き始めています。その証拠に、回答にはばらつきが見られます。取組みが相対的に遅れているとは言え、都道府県議会にも一問一答方式を導入するところが出てきました。回答からは議会の「夜明け」も感じられます。
 政策的な条例案の提出も少しずつ増える傾向にあるように思います。和歌山県議会が森づくりの増税条例を企画立案したときには、議員は地域に入り説明を行いましたが、こうした受け答えにより鍛えられることで、議会は本来の議事機関としての役割を果たせるようになるのです。


大森彌さん(都道府県議会制度研究会座長)

■議員提案でなければ公聴会は開かれない

【廣瀬】 次に、議会における市民参加についてですが、議会での一般市民の発言には極めて制約が多いという現実について、どうお感じになりますか。

【佐藤】 アメリカのピッツバーグでは、本会議でも市民が議員といっしょになって議論をするのは当たり前です。そもそも議会の出発点は、公衆の前でわいわいと行われるものであったにもかかわらず、日本の議会は偉くなり形式ばって、「取締規則」までつくり傍聴人を迷惑視してきた。ましてその人たちに自由に発言させようなどとは考えてこなかった。回答を見る限り、市民が自由に発言できる議会はあまりないようですね。
 アメリカやカナダでは、議案は公聴会を経ないと議決できません。日本の公聴会の手続きは大変面倒ですが、それにしても公聴会をまったく開いていないというのはいかがなものかと思います。

【大森】 それは、首長が用意周到に出してきた議案について、議会が公聴会を開く理由がどこにも見当たらないからでしょう。議会自ら政策を企画立案したいと思えば、公聴会も参考人も必ず必要になる。わずかではありますが、回答にもそうした変化の兆しが見えるのではないでしょうか。

【廣瀬】 江刺市議会では、議会主導で住民参加のワークショップを行い、地産地消条例をつくりました。こうした経験を積めば、住民が発言することの意義やそれを受けて議会がどう答えるのかということを、議会も考えるようになるはずです。

■まだまだ少ない議案関連資料の公開

【大森】 関連資料を公開している自治体が少ないのは、結局、議会の審議は議員と首長たちだけでやるものと観念しているからだと思います。しかも「議案関連資料を議会開会前に公開していますか」との回答に「いいえ」が多いのは、開会中に公開すれば議事に影響するからという理由なのでしょう。

【佐藤】 議長のなかには、「議会とは開会中だけが議会なのであって、開会される前は議会ではない、だから開会前に資料を出すのは間違いだ」と考えている人がいますが、これは明治44年の市制改正の際に、議長が議会の招集権を奪われたときの論法と同じで、そうした考えが一部に延々と受け継がれているように思います。

【廣瀬】 問い合わせの際に、「開会前に議案というものはない」と言った議会事務局もありました。

【佐藤】 こうした議案関連資料は一般市民にもどんどん出して、一緒に検討してもらうべきです。

■傍聴者がメモを取れない議会

【大森】 議会基本条例のなかにも、そのことをしっかりと位置づけるべきです。
 「傍聴者も議員と同じ議案関連資料を閲覧できる」とする議会は、情報公開の流れの中で増えていく傾向にあるように思います。しかし問題なのは、「傍聴時に記録をとることができますか」との設問に、「いいえ」と回答した市町村があったことです。この数値には仰天させられました。傍聴者がメモを取ることで議会内での発言が議会外で問われてしまう、揚げ足を取られてはたまらないという意識があるのでしょうが、これはただちに改めるべきです。

■8議会が議会報告会を開催

【佐藤】 設問17で、「議会報告会を開催している」とした議会は全国に8議会ありましたが、そのうちの一つである宮城県本吉町では、議員が自ら準備して15地区で報告会を開催しています。北海道福島町でも、若い議長が率先して議会運営を提案していると聞いていましたが、ここにも福島町の名前が出てきたのはさすがだと思いましたね。

■会派の賛否公開だけで説明責任は果たせない

【廣瀬】 設問16では「議案に対する議員個人の賛否の公表」について尋ねましたが、重要な議案について賛否が割れた場合も、会派ごとの賛否を議会報に記すにとどまり、個々の議員が実際にどのような態度を表明したかまでは掲載していないというのが一般的でした。

【大森】 議員は、一人ひとりが選挙で選ばれ政治責任を負っているのです。住民に対する説明責任を果たすという点でも、会派が議案に対して責任をとれるのかという点でも、大きなズレがあるように思いますね。

■フォーラムへのメッセージ

【廣瀬】 最後に、議会改革に向けての提起や、フォーラムへの期待をお聞かせください。

【佐藤】 議会改革は、そう一朝一夕にできる問題ではありません。まずはいまの制度でやれることについて取組んでみることです。その上で、制度上の支障がはっきりすれば、三議長会などと一緒に問題を跳ね返すための一歩を踏み出せばいい。
  統一選前の選挙キャンペーンで、議会が主導権を持たなければいかんぞとなったのは、今回が初めてでしょう。大変結構なことですので、ぜひがんばっていただきたい。議員さんだけでなく外からの知恵も支援もあるようですから、線香花火に終わらせることなく、持続的に進めていただきたいですね。

【大森】 マスコミや住民が描く評価と自らの評価との断層が埋められずに、議員は悩んでいる。多くの議会はまだ眠り込んだままですが、この状況に危機を感じ、改革に着手した議会も出てきた。そうした議会がいまのような状況に追い込まれているのは良くないと考えています。議員はもっと自由にのびやかに、公選職としての職務を担うべきです。そのためにも地方自治法203条と100条13項の改革が必要です。

【廣瀬】 今日はお忙しいところ、ありがとうございました。

(2007年3月15日・於:法政大学)